中国美術館が師村妙石篆刻作品10点を収蔵しました
2025/7/7
2025年2月10日、師村妙石篆刻印10点が中国美術館に収蔵され、作品贈呈の儀式が挙行された。中国最高峰の国家美術館に、日本人作家の篆刻作品10点が収蔵される、新たな歴史を確認し合う儀式となった。
今回収蔵された10点の作品は周恩来シリーズ。「作品それぞれの文字、粗密感、全体のバランスなど考慮し、最適な表現をした」と語る師村氏からは篆刻家として最高の表現を追求する姿勢と、これらの作品に対しての意気込み、周恩来総理への敬意が伺える。
中国美術館の貴賓室は、作品10点が整然と並べられ、程よい緊張感が漂っていた。在中国日本大使館を代表し、渡会隼人文化官が同席。征集部、国際部、通訳が揃う中、呉為山館長が現れた。師村氏と笑顔で握手を交わすと呉為山館長は、並べられた篆刻印と印章10点を一つ一つゆっくりと鑑賞された。静かに、真剣に作品を見る呉為山館長の表情が印象的で、中国の国家美術館に収蔵されるということの重みが感じられた。
呉為山館長は「前回の中国美術館展では師村先生から若山牧水作品5点を中国美術館に寄贈を賜りました。それに続き、今回師村先生の篆刻作品10点を収蔵させていただき、感謝いたします」と感謝と敬意を表された。
師村氏は「去年は私にとって三度目の中国美術館での個展が実現しました。これまで3点の収蔵作品に加え、今回の10点で合計13点の作品が中国美術館に収蔵されることになりました。藝術家として最高の栄誉であり光栄に思います。篆刻作品が中国美術館に収蔵されることは、篆刻が中国伝統藝術である側面から見ても意義深いと感じています」と達成感を滲ませた。
日中国交正常化直後の1972年に師村氏は初めて中国を訪問し、北京の人民大会堂で周恩来総理とお会いすることとなり、それから現在まで書道篆刻を通じて日中友好活動、中国での個展を続けてきた。去年の淮安展では、その日本人作家が中国伝統の書道篆刻や古代文字を使って周恩来総理の言葉を表現していると話題となり、好評を得た。その後、その作品が呉為山館長の目に止まり、中国最高峰の国家美術館である中国美術館に収蔵となった。この全てのストーリーが今回の作品の何にも替えられない価値であり、意義であろう。ピカソの《ゲルニカ》がそうであるように、観る者が作品を通していろんな見方ができ、未来への大きなメッセージがあり、誰もが生き方や価値観を考えさせられるような作品が、歴史に残ってきた。
今回収蔵の10点の作品は、日中友好を願う師村氏の人生の集大成であり、今後日本と中国を繋いでいく重要な作品となる可能性を大いに感じさせる。過去の歴史は消えることはないが、現代でアクションを起こして未来に繋いでいくことはできる。日中国交正常化から50年以上が過ぎた今、日中藝術交流のレガシーとなるであろう。
5月21日、師村氏は再度中国美術館を訪問し、李美娜副館長から師村氏に収蔵証書が授与された。李美娜副館長は「師村先生は長年中日文化交流に貢献してこられ、中国美術館はこれまでも師村妙石作品を収蔵してきた。今回は周恩来総理の言葉を使った作品で更に大きな意義がある」と評した。今回の中国美術館での収蔵作品が、その背景にあるストーリーと共に日中両国の多くの人々に伝わり、末長く良い影響を与えていくことを期待する。
(文・写真 師村冠臣)

